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1-24 遺体発見 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

「・・実のところ、橋川署では、今回の上村氏の自殺は、佐原氏の自殺と関連があると見て、豊城署は別に捜査を進めているんです。」
一樹は安永に佐原氏の事件との関係についてぶつけてみることにした。何らかの関係、ヒントが拾えるのではないかと考えていた。
「佐原氏?」
安永は、何の事だか訳が分からない様子で答えた。
「ご存じありませんか?上村さんが検査入院される予定だった、神林病院で自殺があったんです。新聞でも報道されていましたから、てっきり、ご存知かと・・、。」
亜美が疑いのまなざしで言った。
「ああ、あの事件の事ですか・・すみません。豊城市で起きた事なら押さえておくんですが・・・橋川市のことは余り・・。」
安永は少し曖昧な言い方をした。
「上村さんが遺した遺書と、佐原さんが遺した遺書の文面が全く同じだったのです。偶然というのは考えにくい。何かの関連があると考えています。何か、お心当たりの事はありませんか?」
亜美が再び尋ねる。安永は厳しい表情を浮かべて答える。
「先生は、クリーンな豊城市を作るため、身を粉にして奔走されていました。いまだに自殺されるなんて信じ難いのです。もっともっと市民のために働きたいと願っておられたんですから。」
「では、遺書に合った罪を清算するなどという事は・・。」
「罪など・・先生に限ってそのような事は・・まあ、悪を正して逆恨みということはあったでしょうが…。」
「では・・殺された可能性はあるという事でしょうか?」
一樹が訊く。
「いえ・・それは一つの例えです。この田舎町で、そこまでの事は・・・」
「では、なぜ自殺を?」
「わかりません。秘書の私でも先生の心の中まで・・・」
「プライベートで何かトラブルを抱えていたとか・・女性問題とか・・。」と亜美。
「いえ、先生はそういう方ではありません。・・・あの・・もういいでしょうか?」
安永はうんざりした表情を浮かべながら言う。
「最後に一つだけ。・・2か月ほど前、上村氏が、ヴェルデという店に行かれたのはご存知ですか?そこで、佐原氏と会っていたようなんですが、何かお聞きになっていらっしゃいませんか?」
一樹が訊くと、安永は、上着のポケットから手帳を取り出し、カレンダーを確認した。
「2か月ほど前ですか・・ああ、その頃、議会も休みで、私は、先生の指示で2週間ほど、東京へ。その間の先生の行動は判りません。戻ってきてからも、先生から佐原氏の名前をお聞きした覚えもありません。」
「そうですか。」
ちょうどそこへ、上村氏の遺体が発見されたとの連絡が入った。
上村氏の遺体は、投身自殺を図ったとされる場所から2kmほど下流にある、豊城川にかかる高速道路の高架橋の下で発見された。
新設された高速道路の太い橋脚が、豊城川の流れを変え、以前にはなかった場所に淵ができていて、上村氏の遺体はその水中深くで、見つかった。遺体はすぐ近くの河原へ引き上げられた。

「激しい流れのせいで、遺体の損傷が激しいようですね。」
合同捜査となったことで、橋川署の鑑識、川越もやってきていた。鳥山課長も立ち会っていた。
「詳しく司法解剖してみないと判らないでしょうが、今のところ、他殺と思えるような所見はありません。」
「やはり、自殺という事になるか・・。一応、身元を確認してもらおう。」
一樹と亜美は、秘書の安永を連れて現場に到着した。
本来、遺体の確認は身内が行うのだが、上村氏の夫人は、自殺と知ってから精神不安定で自室に閉じこもってしまっていて、医師からも見合わせる様にとの指示が出ていた。
「長い時間、水中にありましたから、人相は変っていますが、判りますか?」
鳥山が安永に尋ねる。
安永は、遺体を一目見て、表情も変えずに、上村氏本人だと認めた。
遺体はすぐに司法解剖に回された。

「何だか、あっさりしているな・・。」
引き揚げていく安永の背中を見ながら、一樹が言った。
「そうね・・長年、秘書として仕えてきたわけだから、涙の一つも流すべきじゃないかしらね。」
「ああ・・それに、あれだけ変わり果てた姿だ。万一にも他人という事だってあるかもしれない。自殺の原因が判らないと言っていた割にはすぐに認めるのも何か引っかかるな・・。」
「上村氏の死を既に分かっていたような感じだったわね。」
「そうだな・・まあ、発見まで時間が掛かったというのもあるだろうが・・・。」
二人は囁くように会話をしていると、鳥山課長が声を掛けた。
「おい、何か情報はつかめたか?」
「いえ・・特に目新しい事は・・・ただ、病院から帰宅して自殺現場の発見までの間、上村氏の動きを確認できているのは安永秘書だけというのは気になります。」
「安永秘書が上村氏を殺したことも考えられるということか?」
鳥山が訊く。
「いえ・・そこまでは・・ただ、結局、上村氏が自殺に至る原因や経緯、自宅からの足取り等は全くわかっていないわけですから・・例えば、誰かが上村氏を連れだしたとか、あの展望台へ呼びつけて殺害したという可能性が否定できない。自殺の証拠も、遺書だけというのも・・佐原氏の場合は、目撃者や監視カメラ映像があって、自分で屋上の柵を超えたのは確認できました。上村氏の場合、何も証明できていない。これでは、自殺と断定はできないでしょう。」
一樹が引っ掛かっている事は亜美も同様だった。
「それに自殺の動機が判らない。これは佐原氏とも共通しますが・・・二人の接点をもっと明確にしないと・・それと、下川医師の関係が気になります。」
一樹は続ける。
「佐原氏と上村氏の周辺から、二人の過去をもっと詳しく調べるしかないな・・。」
鳥山課長が言った。
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