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1-25 情報収集 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

橋川署では、佐原氏と上原氏の自殺は、遺書の文面から見て関連性が高いと判断し、情報収集を続けた。
佐原氏と上村氏、そして、下川氏は高校の同級生であり、大学時代にも東京にいて交流があったのは確実だった。そして、その頃、何か重大な秘密を抱えてしまったと見立て、とにかく、大学時代に絞って情報を集めることにした。
すでに、森田と松山は北海道に行き、佐原氏を訪ねてきた若い男を特定することに注力した。
一樹と亜美は、佐原氏と上村氏がヴェルデであっていたことが確実であり、それを裏付け、そこから自殺への動機を探ることにした。
鳥山課長は、豊城市との合同捜査本部に入り、豊城署の捜査員の情報を入手し、橋川署の情報と突き合わせがら、二つの事件の全体像を整理した。しかし、これといった進展はなかった。

「みんな、興味深い話が出てきたぞ。」
そう言って、合同捜査本部に入ってきたのは、鳥山課長だった。
「上村氏は学生時代に株投資会社を作ったことがあるそうだ。」
「株投資会社?」
一樹が訊く。
「ああ・・あの頃、バブル景気の中で、大学生が会社を作るのが流行っていた。上村氏も仲間たちと会社を作ったようだが、すぐに、バブル崩壊で大損して破綻、借金だけが残ったらしい。」
「その情報はどこで?」
「豊城署でな、上村氏自殺と知って、地元の建設会社の社長がいろいろと話してくれたようだ。どうも、議員だった頃は、変に上村氏を刺激すると、何かと面倒だとかで、皆、口を噤んでいたようだが・・居なくなったと知って手のひらを反すように、いろいろとスキャンダル話をしているんだ。・・いちおう、裏は取れてる。」
「借金はどれくらい?」
「1億円近くの大金だ。だが、卒業後に完済している。どこで金を作ったのかは判らない。実家は寺だそうだが・・それほどの大金を用立てることは無理だろう。何か、危ない仕事に手を出した可能性はある。」
「その借金をネタに誰かに強請られたという事でしょうか?」
一樹が訊く。
「いや・・それはないだろう。一応、完済しているわけだし、学生が会社を作って倒産するなんてのは、あの頃はそれほど珍しい話じゃない。僅かな元手で会社が作れた時代だったからな。それよりも、何処でその金を工面したか、その方が問題だろう。」
鳥山課長が答えると、矢継ぎ早に一樹が言った。
「それに、佐原氏が関係しているという事は?」
「いや、そのころ、佐原氏は大学を辞めていて、東京には居なかったはずだ。とても、関係しているとは思えないが・・」
鳥山は否定するように言った。
「確か、佐原氏も実家の倒産で借金があるにもかかわらず、墓の永代供養で、量円寺に大金を寄付しています。同じころじゃないでしょうか?そうなら、その金の出処は同じと考えても不思議じゃない。」
「そうか・・何かの方法で大金を稼いだ。そして、佐原氏も上村氏も借金を抱えていた。二人で何かの悪事を働いて、大金を稼いだという事か。そしてその恨みを抱いた人物が二人を脅したという事か。一応話は繋がるが・・。しかし、20年以上昔の事だ。それにそれほどの大金が絡んだ事件であれば、捜査もされているはずだからな・・・」
鳥山課長は推測の域を出ないことを悔しがるように言った。
「森田と松山が北海道で何か掴んでくれると良いんですが・・。」
一樹は一縷の望みを託すように言った。

そこに、タイミングよく、森田から電話連絡が入った。
『佐原氏を訪ねてきたのは、特定できませんでした。もう20年以上前のことで、当時の工事関係者もかなり高齢で、若い頃の上村氏の写真を見せたんですが、判らないようです。もう少し粘ってみます。』
「わかった。・・ああ、それと、大金が絡んだ事件が起きていないか、調べてみてくれ。」
電話口で鳥山が言った。
『大金が絡んだ事件ですか?』
「ああ、佐原氏を訪ねて行ったのが上村氏だとすると、借金返済のための金普請、あるいは、大金稼ぎの話を持ち掛けた可能性がある。90年ごろ、そっちで何か大金が絡んだ事件や事故が起きていないか、調べてみてくれ。」
『判りました。・・ああ、それと、言い忘れていました。・・佐原氏を訪ねてきたのは一人じゃなかったようです。会社に顔を出したのは一人なんですが、どうも、車の中にもう一人居たようです。』
「もう一人?」
『ええ、それは当時、作業員だった人物から聞きました。昼休みで事務所に戻った時、妙な車が出入り口に留まっていたんで覚えていたようです。シートを倒して、タオルを顔にかけて寝ていたそうです。」
「じゃあ、男二人が佐原氏を訪ねたということか・・上村、下川の二人の可能性が強いな。」
そう言いながら鳥山は一樹をちらっと見た。
話を聞きながら、一樹も頷いた。
『それと、車はどちらかの男の持ち物だったようです。ちょっと古い外車で・・真っ赤な車体で、ええっと・・そう、シボレーとかいう車らしいです。あの頃、あまり見かけない車で、珍しくて覚えていたようで、』
「赤いシボレーか・・判った。その線で、上村氏と繋がらないか、調べてみよう。引き続き、頼む。」
そう言って、電話を切ると、鳥山が一樹と亜美に向かって言った。
「やはり、北海道に尋ねて行ったのは上村氏と下川氏の可能性が高いな。・・・車の件は俺が調べてみよう。上村氏のものなら、例の建設会社の社長の線から何か出てくるかもしれない。お前たちは、一刻も下川氏に話を聞いてくるんだ。札幌に尋ねて行ったことが確認できれば、きっと話が繋がる。」
それを聞いて、亜美が鳥山に言った。
「あの・・課長・・もし、佐原氏、上村氏、下川氏の3人が一緒に大金を稼いだとしたら、下川氏も命の危険があるとは言えないでしょうか。」
「ああ、大いに考えられる。あるいは、下川氏が自殺教唆の実行犯とも考えられる。いずれにしても、重要人物に違いない。早く話を聞いてこい。」
鳥山の言葉に二人は部屋を飛び出していった。
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