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1-31 秘書からの連絡 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

「ここですか・・。」
川越は大きなカバンを肩から掛けて、ゆっくりと周囲を観察しながらやってきた。
「ああ・・ここだ。さっき、向こう岸の目撃者も発見できた。何があったかまでは見ていないようだが、男二人がここに居たのは確かだった。そして、上村氏の車が県道に留まっていたらしい。きっと、上村氏はここで安永氏と逢っていて、安永氏に激流に突き落とされたんじゃないかと思う。」
一樹が説明する。
「しかし、何を調べる?確か、あの日は豪雨の後で増水していたはずだ。痕跡を探すのは厳しいぞ。」
川越が戸惑っている。
「何でもいい。目撃証言を裏付けるものを見つけてくれ。」
「わかった。とにかく、ここ数日の間に付いた、新しい痕跡や遺留品を探してみよう。」
川越はすぐに鑑識課員に指示して、作業に入った。
「ここで上村氏が殺害されたとなると・・佐原氏の件とのつながりをどう考える?」
じっと話を聞いていた鳥山課長が一樹に訊いた。
「いや・・そこまでは・・ただ、佐原氏の件と上村氏の件は繋がっていると考えて捜査をしてきましたが、やはり、何かしっくりしないんです。」
「遺書の件はどうだ?」
「ええ・・関連はあるでしょうが、象徴的に同じ文面にしたのも、妙に引っかかるんです。」
「模倣犯という事か?だが、あの文面はまだ公表されていないんだぞ。佐原氏を自殺に追い込んだ人物以外に知るものは限られているはずだ。」
「そうですね・・でも、病院関係者なら、知っている可能性はあります。」
「仮に、病院関係者が佐原氏の遺書の内容を模倣して、自殺に見せかけたとして、何かメリットはあるか?むしろ、そうしない方が、さっさと自殺で処理されるとは思うが・・。さっきお前が言ったように、秘書の安永氏が犯人だとすると、動機は何だ?わざと模倣するような細工が必要か?」
「その点は判りません。」
「秘書以外という事は考えられないか?過去の秘密で脅して自殺に見せて殺すという佐原氏の件と同一犯と館あげるのが自然だろう。」
「ですが、レイさんは思念波を病院で感じていました。佐原氏を自殺へ追い込んだ奴は、病院に居たんです。」
「では、安永氏と病院に居た奴が協力してという筋か?」
「そうかもしれません。」
「だがな・・・。」
鳥山課長は腕組みをして、じっと川面を眺めながら考えている。
「もう一度、安永氏に話を聞くしかないでしょう。」
一樹は鳥山課長に言った。
「ああ・・・それなんだが・・・さっき、安永氏から連絡があって、上村氏の自殺の動機について話があると言ってきたんだ。ちょうど良かった、お前、これから話を聞いてこい。ただ、この川岸の事はまだ言うな。物的証拠が出て来てからだ。」
一樹が車に戻ると、レイは目覚めていて亜美と話をしていた。
「もう大丈夫なのか?」
一樹が訊くと、レイは笑顔を返した。
「今、鑑識が、あの周辺を、何か事件と繋がる痕跡がないか調べている。」
「ええ、さっき、鳥山課長がこれから調べるからって・・。」
亜美が答えた。
「これから、秘書の安永氏に会いに行く。上村氏の自殺につながる情報提供だそうだ。・・レイさんはどうする?病院へ戻るなら、誰かに送っていかせるが・・。」
「いえ、私も同行させてください。あの川岸に感じた思念波は、病院のものとは違っていましたから・・ひょっとしたら、その秘書の方から感じるかもしれません。」
「そうか・・判った。」
すぐに、上村氏の自宅へ向かった。
秘書の安永は、玄関前で一樹たちを待っていた。
「すみません。お手間を取らせまして。」
安永氏は、落ち着いた表情で一樹たちを迎えると、すぐに、上村氏の書斎を案内した。
レイは車内で待つことにした。
「これなんですが・・。」
そう言って、安永氏は、1冊のノートを取り出した。
「これは、上村先生の日記です。・・いや、議員活動を記録したものです。ほら、このページ。」
開いたページは、2か月ほど前の日付だった。
「下の方に、記号の様に書いてあるのが判りますか?」
指さした先には、小さな文字で、『S・ヴェルデ・PM10』と記されていた。
「やはり、刑事さんがお話された、2か月前の事が書いてありました。Sというイニシャルの方とヴェルデで会っていたようですね。」
「このSのイニシャルに心当たりは?」
「いえ・・先生は大抵、誰かと逢われるときには、その方の氏名はしっかり書かれるんです。ですから、何か知られたくない関係なのではないかと思います。」
「これまでにもそういう方が?」
亜美が訊いた。
「いえ・・ああ・・そう言えば、その少し後のところ・・ああ、ここです。ここにもあるんです。」
それは、2週間ほど前の日付だった。『D・S、TELあり』と書かれていた。
一樹は渡されたノートを少しづつ遡って、不自然な記述がないかを調べた。
その様子を見ながら、秘書の安永氏は言った。
「私はほとんど先生と行動を共にしてまいりました。そこに書かれている内容は全て知っているつもりでした。ですが、読み返してみると、その2か所だけは判らない。こんなことは今までありませんでした。」
「これが、上村氏の自殺の動機だと?」
亜美が訊く。一樹は引き続きノートの中身に集中している。
「いえ・・そうじゃありません。」

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