So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

1-34 松山刑事の報告 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

現場検証が終わり、鳥山課長以下、橋川署の刑事課は皆、一旦、橋川署に引き上げた。
「一度、これまでの3件の事件を整理するぞ。」
鳥山課長がいつになく苛立った様子で言った。
一樹、亜美、葉山、川越、藤原女史は、椅子に座り、経緯が記されたホワイトボードを見つめている。ホワイトボードの脇には、紀藤署長も座っていた。
鳥山課長が話し始める。
「まず、最初は佐原氏の投身自殺だ。監視画像から、自らフェンスを乗り越え落下したのは事実だ。遺書もあり、目撃者もいる。遺体からは不審な点は見つかっていない。これらの状況証拠から、自殺と断定せざるを得ない。だが、自殺の動機が不明であり、司法解剖で胃の内容物に不自然な紙片が発見されている。それらを踏まえて、自殺教唆の可能性を考え、捜査を続けてきた。この件はいまだ決着はついていない。」
皆頷き、鳥山課長が話を続けた。
「次は、上村氏の自殺だ。安永秘書の供述だけが頼りだが、豊城公園の展望台からの投身自殺。遺書はあったが、目撃者は居ない。これも、自殺の動機が不明だ。したがって、自殺と結論付けることはできない。他殺の可能性が残っている。」
一樹は発言する。
「周辺の聞き込みで、自殺した場所の上流で、男二人が目撃されています。一人は上村氏と考えられますが、もう一人は特定できていません。あの場所で殺害されたか、川へ突き落された可能性があります。」
それを聞いて、鑑識の川越が発言する。
「川岸の調査を行いましたが、二人が居たことを特定できる証拠は見つかっていません。ただ、上村氏の遺体解剖の結果、後頭部に打撲痕がありました。水中での打撲の見方も出来ますが、溺死固有の肺内部の浸潤は少なく、ほとんど意識を失った状態で水中に入ったのではないかとの見方ができるようです。矢沢刑事が言うように、川岸で殴られ川に突き落とされたという可能性は排除できません。」
それを聞いて、鳥山課長が言った。
「では、上村氏は他殺と自殺の両面の可能性で捜査を続行する。次に、下川氏だが、薬品庫内で頸動脈を切って失血死。使用されたメスからは本人の指紋のみ。鍵も所持していたことから、自ら薬品庫に入り、そこで頸動脈を切って自殺したと考えられる。他殺の可能性は低いと思われるが・・・。」
一樹が発言する。
「確かに状況は全て自殺を物語っています。ただ、気になるのは、なぜ、薬品庫だったんでしょう?出張から戻った次の日の早朝、薬品庫に入るというのが引っ掛かります。研究室でも自宅でも良かったはずですが・・。」
「だが、他殺とするほどの根拠ではないな・・。」
鳥山課長が答える。それを聞いて、紀藤署長が発言した。
「高校時代から親交のある3人が、同じ遺書を残して、自殺。その遺書には『罪を償う』とある。・・全て、自殺で処理すれば、彼らの罪は暴かれることはない。だが、敢えて、意味深な遺書を残したのは何故だ?本当に秘密を守るためなら、こんな遺書など残さない方が良いはず。だからこそ、我々は自殺か他殺か疑い、過去を調べようとしている。」
「彼らの過去の大罪を明らかにし、罰を与えたいと思っている・・・被害者による復讐・・・か・・。」
一樹が言う。
「では、すでに3人を死に追いやったわけだから・・復讐は終わったということ?」と亜美。
「いや、まだ、彼らの罪が暴かれていない。」と一樹。
「彼らが死んだ今、その被害者が彼らの罪を公にすれば済むんじゃないのか?」
鳥山課長が一樹に訊く。
「それならば、回りくどい事をしなくて、訴えれば済むことでしょう?おそらく、確証がなかったじゃないでしょうか?昔の事件を立証する証拠がないのではないでしょうか?だから、一人ずつ、事実を確認する事が必要だった。被害者の記憶と3人の記憶を擦り合わせ、事実を明らかにする必要があったんでしょう。」
「最初が、佐原氏だったというわけか。」
と鳥山課長が言うと、一樹が続ける。
「ええ、そこで、被害者は何か確証を得た。そして、次に、上村氏、そして、下川氏へとつながったと考えられませんか?」
それを聞いて亜美が言った。
「でも、レイさんやルイさんが感じた思念波。・・病院内では二人の思念波、そして豊城でも一人。それぞれ3人の思念波を感じている。一人の犯行と考えるのはどうでしょうか?」
「犯人・・いや、それぞれの事件は、3人の被害者が共謀して起こしたものということか?」
鳥山が言った。
「少し無理があるでしょう。・・いや・・思念波の事を疑うわけじゃない。むしろ、そのことがあるからこそを単なる自殺と処理することはなくなったわけだから。ただ、佐原氏の自殺と、上村氏と下川氏は違うように感じるんです。」
一樹が言う。
「やはり、3人が抱える秘密、昔の罪が鍵という事になるわけか・・・。」
鳥山課長が呟く。

そこに、北海道に言っていた松山と森田が戻ってきた。
「遅くなりました。・・・ありましたよ、矢沢さん。」
森田がそう言って、大きなボストンバッグを机の上に乗せた。
「佐原氏のもとに、上村氏が現れた年に、札幌近辺で起きた事件を調べてみました。」
バッグを開くと、幾つもの調書が入っている。
「ええと・・未解決になっている事件は3件あったんですが・・・。」
松山がバッグの中の調書を探り出すように見ている。
「これが最も気になりました。」
松山が取り出したファイルには、『帯広一家無理心中事件』という表題がついていた。
「今から、25年前ですので、詳しい話を聞ける方がなくて・・ただ、発生日が、佐原氏を若い男が訪ねた日の2日後だったことと、事件自体は一旦一家心中で処理されていて、2年ほど後に、強盗殺人の疑いで再捜査になった事が、何だか、今回の連続自殺と関連があるように感じたんです。」
松山は少し憂鬱な表情を浮かべて説明した。
「2年ほどして再捜査というのは珍しいな・・・何か、新たな物証でも出たのか?」
鳥山課長が訊く。
「物証というか・・・、」
松山は、森田の顔を見ながら、どう説明したものかと問いかけている様子だった。
4/25

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。