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2-6 残された手紙 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

君原副院長は、一樹たちとは違った視点で、今回の事件を捉え、解決しようとしていたのだった。
しかし、それは、病院の実質的な管理者として、強く反省していることによるものだった。
「下川医師と遠藤技師が何らかの意図をもって入院させた?・・何故でしょう。・・過去の事件への復讐であることは警察でも概ね想定していました。だが、そうなると、下川医師もその対象者のはずです。現に、下川医師は自殺か他殺かはっきりしない状態で死んでしまった。・・遠藤技師単独で検査データを改ざんし、下川医師はその結果を正しいものだと受け止めて、入院の判断をしたと考えるのが自然なんじゃないでしょうか?」
一樹が念を押すように訊く。
「ええ・・それも考えました。しかし、下川医師ほどの優秀な医者であれば、数値の異常やデータ改ざんを見抜けないはずはない・・これは、下川医師の考えによるもの、あるいは二人で共謀しているのではないかと考える方が、妥当なのです。」
君原副院長は、冷静に答えた。
「自分が、死を迫られることを理解したうえで、今回の事件を起こしたという事ですか?」
一樹が再び、君原に訊く。
「そこまでは判りません。ただ、深く関与している事は間違いないと思います。」
君原は残念そうに答えた。
一樹も納得したようだった。
「レイさんが感じた思念波の持ち主は有田看護師ですよね。」
亜美が口を開いた。
「ええ・・間違いないと思います。」
レイが答える。
「有田看護師は、帯広一家殺害事件の、唯一の生存者でした。そして、静岡、足柄サービスエリアで発見された。おそらく、犯人たちに連れて来られたはず。そして、その犯人が、佐原、上村、下川の3人だった。有田看護師は、3人の居場所を掴んで、終に復讐を果たしたという筋書きができる。」
一樹が説明する。
「有田看護師と遠藤技師は、静岡の児童養護施設で兄妹同然の仲だったこともわかっています。おそらく、有田看護師の復讐を遠藤技師が助けていたという事が考えられます。」
と亜美が続けた。
「ということは、有田看護師と遠藤技師が中心になって、下川医師も巻き込んで、佐原氏と上村氏の殺害・・いや・・自殺ほう助を行った。その上、最終的に下川医師も自殺に追い込んだということか。」
鳥山課長が纏めるように話す。
「それぞれの関係はよく解りました。ただ、それを裏付ける証拠はどうかという事になりますが・・」
紀藤署長が、皆の顔を見ながら、訊いた。
「その2通の手紙には、我々の疑問を解き明かす内容が書かれていると考えられます。ただ、注意しておきたいのは、今回の事件は、余りにも物証や目撃情報が足りない・・状況証拠ばかりです。そこへ、この手紙。」
紀藤署長は、目の前の机に置かれた手紙を取り上げ、じっと見つめてから、続けた。
「冷静になっておかないと、この手紙を鵜呑みにして、真実を見落としてしまうかもしれません。・・この手紙を開く前に、皆さんの疑問や引っかかっている点を整理しておきましょう。」
紀藤署長は、捜査本部が行き詰っている状態だからこそ、冷静に捜査を進める事を強調し、皆も、同意した。
暫く、沈黙があった後、切り出したのは、葉山だった。
「ひとつ、気になるのは・・有田看護師は、その犯人たちをどうやって探し出したのか。事件当時、有田看護師はまだ5歳だった。それから20年以上、おそらく、犯人たちの風貌も随分変わっているでしょうし、5歳の時の記憶だって、あいまいになるでしょう?それでも、犯人に辿り着くというのは奇跡としか思えない。」
それを聞いて、松山が立ちあがって言った。
「それでしたら・・何か、犯人だと決めるものがあったんじゃないでしょうか?・・名前とか…身体的な特徴とか‥子供でもはっきりと区別できるような何か・・・。それを偶然発見したというのはどうでしょう?」
それを聞いて、今度は森田が言った。
「その逆はどうでしょう?犯人側から、有田看護師・・当時5歳の女の子を偶然発見してしまった。事件の発覚を恐れ、自分が犯人だという事を記憶しているかを確かめるために接触したとは考えられませんか?」
「覚えていなければ、そのままほっておけばいい、もし覚えていたのなら、何らかの方法で口封じをするということか?」と一樹が言う。
「ええ・・そうです。リスクはありますが・・偶然、身近に事件を知る人物が現れたとしたら、疑心暗鬼でいるより、いっそ確認したいと思うんじゃないでしょうか?」と森田が加える。
「確か、下川医師が有田看護師を神林病院へ呼び寄せたんですよね?」
藤原女史が思い出したように言った。
「ええ、そうです。神林病院のスタッフを集めていた時、下川医師から紹介があり、採用しました。」
君原副院長が答えた。
「では、下川医師と有田看護師は静岡の病院時代に会い、北海道の事件をどちらかから切り出した・・そして、今回の事件へ繋がったということになりますよね。遠藤技師はどうです?」
藤原女史が訊くと、君原副院長が答える。
「静岡の国立病院の友人から紹介があって、私が、採用するよう推薦しました。」
それを聞いて、藤原女史が言う。
「私が調べたところでは、下川医師と遠藤技師は国立病院で同時期に働いていました。」
「そうか!」
と一樹が立ちあがった。そして続けた。
「有田看護師と遠藤技師は、子ども時代に同じ施設で過ごし、兄妹の様な仲だった。その頃、有田看護師から事件の事を聞いていた。そして、その犯人の特徴も遠藤技師は知っていて、国立病院でその特徴を持った人物・・下川医師を見つけた。そのことを、有田看護師に伝え、有田看護師が下川医師に近づいた。そういう経緯じゃないでしょうか?」
それを聞いて、葉山が続ける。
「そこから今回の事件の準備が始まった。おそらく、下川医師に近づいた有田看護師は、北海道の事件の事を下川医師に話して、脅迫した。共犯者を含めた今回の復讐計画を手伝わせたという流れなら、理解できる。」
それを聞いて紀藤署長が口を開いた。
「だいたい、今回の事件までの経過はそれでまとめましょう。きっと、その裏付けになることが、手紙に書かれているでしょうから。・・では、手紙を開けてみましょう。」
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